密室公園

大阪に引っ越して来てから3ヶ月になる。川崎に比べると山がちなところで、緑も多く、からりと晴れた日には散歩に出かけるのが気持ちいい。早朝のまだひんやりとした風を満喫しながら歩いていると、木々の香りにまじってたこ焼きの匂いがする。

幹線道路を離れて少し坂を登ると、民家を中心としたエリアが広がっている。その一画のあまり目立たないところに、密室公園はあった。3回通りかかってやっとそのおかしさに気づくほど存在感の薄い、そして微妙な奇妙さなのだ。四方をフェンスで囲まれていて、出入り口がないのである。

中にはサッカーボールを大きくしたようなジャングルジムとひとり用のブランコがあるだけ。これはどういうことだろう。

まず思ったのは、フェンスに見える部分のどこかが出入り口になっているのではないかということだ。確認のためフェンスに沿って公園を一周する。—ない。

わずか数メートルの距離なのに遊具がとても遠い。居心地が悪くなってきた。 遊具を飼っている檻のようにも見えてしまう。動物園の一区画みたいな。

この公園を設計した人のことを考えると怖くなってくる。なにか子どもに恨みでもあるのだろうか。わざわざ遊具を作っておきながら遊ばせない陰湿さ、背筋が冷たくなるほどだ。

それともフェンスに囲まれているのは公園ではなく、ぼくの立っているほうの世界であって、檻の中から見る遊具は自由の象徴なのだろうか…

ぐるぐると陰鬱な想像の迷路に迷い込んでいたら、やんちゃな足音が近づいてくるのに気づかなかった。小学校低学年の集団があっという間にぼくの脇を駆け抜けていく。 そしてそうするのが当然といった顔でフェンスをよじ登り、公園で遊びはじめたのだった。

彼らが駆け抜けた後には、たこ焼きの香ばしい匂いが漂っていた。

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