【おすすめインスト】緻密さが魅力の jaja「曇りのち晴れ」を聴こう

自然現象の中でいちばん気分に影響を与えるのはやっぱり天気だろうか。天気が変われば人間の五感すべてが変化するといってもいいと思います。晴れれば目に明るく、曇れば鼻に鈍く、雨が降れば耳に触れる。

たとえ室内にいたとしても天気の影響から逃れることはできません。というより、身体が無意識に外の様子を知りたがってしまうように思います。ブラインドから差し込む光の量や、時折ひらくドアから吹き込む風によって外の天気を知ろうとする。

人間もやはり動物ですから。

jaja はソプラノサックスを中心としたジャズバンド。「曇りのち晴れ」は2007年のアルバム『Blue Sky Blue』に収録されています。

それでは曲をかけましょう。

…ぽち

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 ぜんぶ、いいぞ

軽快なピアノのリズムではじまるこの曲、実は語る言葉をあまりもっていません。ひとことで言えば、

ぜんぶ、いいぞ

以上。ということになるのですが、それではこうして書く意味がなくなってしまう。ぜんぶいいぞ、を構成するポイントとしてひとつだけ挙げるならやはりメロディだろう、ということでメロディだけ、それもサビのメロディだけ書くことにします。

緻密なメロディ

サビメロディの調和感はいったいなんなのだろう。無理してるように聴こえる箇所が全くないのにダイナミックで、それでいて凄まじくおさまりがよいのです。

ぼく自身が作曲をするときの感覚の話になりますが、メロディを紡いでいると「曲になってはいるが、うまくない」フレーズをつくってしまうことがよくある。よくあるどころではなく、ほとんどの場合がこれだ。

このままゴリ押せば完成まで持っていくことはできそうだが、モヤモヤが付きまとう… といった感じ。こうなってしまっては作曲を進めるモチベーションも上がらないのでしばらく寝かせて様子を見たりします。

反対に、すごくピタッとハマるフレーズができることもある。これをぼくは「緻密」なフレーズと呼んでいるのですが、これが得られると途端に曲全体が生き生きしてくるのです。「緻密」が他の部分を生かし、他の部分が「緻密」に向かってくるという。

この「緻密」さが端的に表れているのが「曇りのち晴れ」のサビだと思うのです。

 緻密の内実

サビのメロディを耳コピした譜面がこちらです(Cメジャーキーに移調してあります)。

譜面から旋律が想像できる方は想像してみてください。想像できない方も、四分音符や八分音符といった簡単な音符ばかりで構成されていることはわかるはず。

もう少し詳しく見ると、メロディが上下に動く範囲(レンジ)は1オクターブに収まっていることもわかります。インストの世界では一般にヴォーカル曲よりも使える音の制約が少ないので、レンジを広くとった自由なフレーズが多くなりがちですが、この曲のサビはつつましくも1オクターブ内で動いている。

かといってダイナミクスに欠けるわけでもなく、譜面4小節目の下りフレーズなどはそれまで逡巡していた旋律の晴れやかな解放といった趣がある。上のドから下のドまで駆け下る、その駆け下り方もよく練られている。

少し専門用語を使えば、半音・全音・全音・短3度・長3度 という音程差でつくられている。たとえていうなら頂点に達したジェットコースターが最初はゆっくりと、しかし確実に加速しあっという間に最高速度に達するような駆け下りなのである。

そしてそのあとのラ。駆け下りで加速したあとのバネのようなラへの跳躍はすごい。

この長いラでサビの前半はひと区切りつきます。

 自然体の美

サビの後半、譜面5小節目終わりからのフレーズは、なんと半音が3回連続します(ミファ・ドシ・ファミ〜)。流れるような前半とは打って変わって、ハネるように、しかも半音音程の持つアンニュイな響きも含ませながら進行していく。

ここまでに書いてきたような要素をすべて、ぼくは「緻密」と呼んでいます。奇を衒った特別なことなしに、いいメロディ。そこにとてもナチュラルな素晴らしさを感じるのです。

 インスト曲のナチュラルな魅力

インストゥルメンタル音楽はこのナチュラルな素晴らしさを持っている曲が多いように思います。アンビエント(環境音楽)のようにより直接的にナチュラル(ネイチャー?)を感じるものもあれば、バッハのように数理的にナチュラル(神?)を体験するものもある。

「曇りのち晴れ」はメロディの運びによって自然体あるいは自然を聴かせてくれる曲です。

今回はサビのメロディについてだけしか触れられませんでしたが、ソプラノサックスの音色はもちろんのこと、AメロやBメロなど他の部分や他の楽器もどれも素晴らしい。特にベース。

やっぱりぜんぶいいぞ、をもってイントロダクションとしておきます。

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